私は平成１４年４月から平成２１年３月まで宮城県図書館長を務めていた。平成２１年から令和４年３月まで１３年間仙台大学で『歴史と人間』をテーマに前期・後期それぞれ３００人に講座をしてきた。合わせて６０００人近くの学生が講義を受けたことになる。 　『抜粋のつづり』との出会いは、私が『大法輪』へ平成２８年６月号に掲載した『大震災から五年、天皇陛下の視線』が、掲載されたのがきっかけで、各界で活躍されている皆さまの素晴らしい文章に触れることができた。この「抜粋のつづり《は昭和６年株式会社クマヒラの創業者熊平源蔵氏が社会に感謝・報恩の思いから創刊したもので、戦中・戦後の混乱期の３年間を除き号を重ねてきたものである。 　その年の新聞、雑誌、書籍などから心に響く珠玉のエッセイー、コラム３０数編を抜粋し、小冊子にまとめ発刊、５０万部を１３０か国の日本大使館や総領事館、諸官庁、金融機関、上場企業、学校、病院、図書館、全国９万所の団体・個人に寄贈している。 　旧知の宮城県冨谷市の佐藤病院（院長・佐藤光精、ゆかり夫人）から１０数年前からの『抜粋のつづり』が待合室に置いてあるから差し上げますよとお話があり譲っていただいた。それらの中からさらに私が学生にはぜひ読んで欲しいものを選択し、資料集として学生に配布している。 　学生に配付している資料は手作りの（１）教科書（２）付属資料（３）抜粋のつづり（４）世界の偉人の言葉　の４種類である。 　学生に幅広い知識を与え、本を読む契機になればとの思いからである。そのため講座のつど毎回レポートを提出させているが、特に『抜粋のつづり』は大好評で多くの学生に大きな影響を与えている。 私の講座は。パワーポイントを使用しての講座で、『歴史と人間』と『付属資料』まではパワーポイントを使用していたが、あとは読んでもらうようにしていた。ただ、この２年間はグーグルクラスルームを使用してのオンライン講座となり資料は配付しているが、講座の最後では『抜粋のつづり』の一部を朗読し紹介するようにした。そして自由に印象に残った事をレポートにして提出もらっているが、『抜粋のつづり』を契機に読書に親しむようになったり、前向きに生きる大きな契機を与えてもらうなど大変役立たせていただいた。 　３月末で仙台大学学を退職し、家の古文書等の整理と養蜂事業を本格化して新しい人生を歩もうと考えているが、『抜粋のつづり』を配布したことでより充実した講座を進めることが出来たこと、多くの学生にいろいろな意味で大きな刺激を与えていただいた事に株式会社クマヒラには心から感謝をしている。