トップページへ仙台藩最後のお姫さまみちのくの文学風土
みちのくの和歌、遥かなりみちのくの指導者、凛たり武将歌人、伊達政宗
 
22世紀を牽引する叡智の杜づくりーその1−
2004年3月29日


  
1 貴重図書保存への司書の熱い思い

 宮城県図書館の前身は明治14年7月、宮城師範学校内に創設された宮城書籍館に始まる。幾多の変遷を経て平成10年3月仙台市北部の現在地に開館した。歴史が古いだけに古典籍も数多く存在するが、その中心は伊達文庫、養賢堂文庫、青柳文庫、大槻文庫等で合わせて6万点余である。
 私は昨年4月図書館長に就任したが、事業概要の説明を受けた際に、司書から「これらの貴重図書がこのままでは荒廃していくので、何とかして欲しい」という切実な訴えを受けた。
 私も貴重図書については承知し、保存・修復の必要性を痛感していたので、第一段階としてまず県有形文化財の指定から始めようと考えた。条件は既に備わっている。司書は長い蓄積を通して幅広く、かつ専門的な知識を有している。何より全国ベースで研究を続けられている先生方と、信頼関係に裏打ちされた太いネットワークを持っている。加えて副館長以下事務方は、実務に通じたベテランで行動派である。館として一致協力して取り組めば不可能ではない。
今のように社会全体が混迷しているときこそ、最も大切なことは自分たちの国や故郷の歴史や文化を知り、自信と誇りを取り戻すことではないだろうか。図書館には、それを可能にする多数の資料がある。すぐに副館長・部長・班長らと話し合った。みな異存はなく「力を合わせてすぐやりましょう」ということになった。これほど力強いことはない。司書も事務職員も自分の持っている力を発揮し、それを一つにすれば大きな力にもなる。予算的な裏付けはないが、しかるべき先生方に当たって、図書館の考えを説明しボランティアとして協力してもらおう。

2 文化財指定に向けた第一歩

 行動は早かった。東京国立博物館の主任研究員だった長岡由美子氏が3月に退職し、仙台に戻っているというので急ぎ連絡を取り、4月17日には図書館に来ていただき、図書館の所蔵品について研究を踏まえたお話を伺った。国の文化財保護審議会の委員をされていた東北大の有賀祥隆教授に主なものをご覧いただき先生の意見を伺い、文化財指定に向けた指導・助言を受けた。県の白鳥文化財保護課長とも緊密な連携を図った。
この事業の正否は、県上層部の理解と決断にかかっている。7月には貴重資料20件を県庁の大会議室に展示し、知事等に直に見てもらった。みなその質の高さと量の多さに驚かれていた。庁議や主な施設には貴重書を撮影した手作りカレンダーを配布し啓蒙を図った。首脳部の理解は深まった。
 平行して貴重図書の相対評価に着手した。予算はないが、なんの恐れることがあろう。私達の心意気に共鳴して下さる先生方の協力を得よう。齊藤鋭雄元県農業短期大学学長、浜田直嗣元仙台市博物館長、竹内英典元県図書館資料奉仕部長、長岡由美子元東京国立博物館主任研究員、みな喜んでボランティアで協力しましょうということで、指定に向けた準備を加速させた。