トップページへ仙台藩最後のお姫さまみちのくの文学風土
みちのくの和歌、遥かなりみちのくの指導者、凛たり武将歌人、伊達政宗
 
2004年10月5日


  
  淋しさにたへたる人のまたもあれな
               庵ならべん冬の山里 西行
 冬の訪れは渡り鳥の飛来に始まります。鳥たちが帰って来たかと言う安堵感とともに、この大切な預かりものを無事に北国に帰さねばと考える日々。迫町・築館・若柳町にまたがる、伊豆沼・内沼はサンクチュアリに指定されている「野鳥の楽園」です。
 白鳥や雁など北国の冬の大使が数多く訪れ、白鳥は、伊豆沼・内沼そして迫川(迫町内、豊里町二つ屋付近・栗原郡若柳町内)を中心に、人々と温かい交流を繰り広げています。近年、訪れる鳥の数は増加の一途を辿っています。外の地域の環境が悪化しているのでしょうか。餌の少ないことを知っている心優しい人達に支えられ、冬の一時を過ごしていく鳥たちです。人の助けがなくとも自然の中の餌で十分間に合うまでの環境をつくり出してやることが、大きな課題でもあります。
 早朝の伊豆沼・内沼、蕪栗沼(遠田郡田尻町)から数万羽の雁が飛び立つ様は壮観です。渡り鳥が北国へ帰った後、傷つき帰郷できない仲間の鳥を気遣い水辺でひっそりと仲間たちの帰りを待つ鳥の姿は、私たち人間が忘れかけている大切なことを想い起こさせてくれます。傷つく鳥たちの多くなったのも心が痛む思いです。
 この地が生きとし生けるもの全てのサンクチュアリとなる日を一日も早くつくることが、ここの地域に住む私たちの敬虔な祈りでもあります。我が子を慈しむように優しい気持ちで鳥たちに接し、渡り鳥たちが北国へ向かうのを確かめた後、ここに住む人達はまた大地に新しい命の息吹を与える作業を開始するのです。
  なにとなくおぼつかなきは天の原
                霞に消えし帰る雁がね  西行