トップページへ仙台藩最後のお姫さまみちのくの文学風土
みちのくの和歌、遥かなりみちのくの指導者、凛たり武将歌人、伊達政宗
 
登米物語と芳賀邸の公開ーその5
2007年5月2日


 
  
歌に見る明治天皇の君主の心得
 それでは為政者にはどんな気持ちで仕事をしてきたのでしょうか。日本の近代化に大きな役割を果たした明治天皇を例にお話しをしてみたいと思います。
明治天皇はすぐれた数多くの歌を残され ています。天子として語れぬ胸の内を歌にとどめられたのでしょうか。
  国民のおくりむかへて行くところさびしさ知らぬ鄙の長みち
  年どしに思ひやれども山水をくみて遊ばむ夏なかりけり
  天を恨み人をとがむることもあらじわが過ちを思ひかえさば
  あさみどり澄みわたりたる大空の広きをおのが心ともがな
 一首目は、どんなに疲れていようとさびしかろうと国民の送迎に接すると忘れてしまう歓びを詠ったものです。二首目は、毎年山深い谷川のすずしい山水を手に汲んで、心を豊かに遊ばせたいと思いつつ、多忙のためかなえられない心のうちを詠んだものです。三首目は、自分も過ちを犯すのだから、他人をとがめることなどすまいとする心のうちを詠んだものです。四首目は、凪いだ湖のおもてのように、むらのない明るく広い心得をもった自分でありたいという気持ちを詠んだものです。
 日本近代の黎明の時代、真摯に重責を果たされた明治天皇の気迫が伝わってきます。
 国政あるいは地方をあずかる者にとっていま一番大切なのは国体の安定を図り、泰平の世を目指して国難を乗り越えた先人達の叡智に学ぶことではないでしょうか。。封建時代に戻れというのではありません。過去のものと受け流さず、治政の手本とされた書物にも目を通して、再生方法を模索するのも無駄ではありません。国をあずかる指導者、地方をあずかる指導者として置かれた立場や責任の重さをわきまえ、国民や住民の信頼を得るように身を正す努力をせねばならなりません。総合的な学問を通して、一人一人の幸福を守る能力を身につける気概で臨んだなら、自信と誇りをもってこの国のありようや進むべき方向、地域の進むべき方向や、国民や住民の将来の生活像を目に見える形で示すことができるのではないでしょうか。藩政時代及び明治草創期の指導者達には、国民に夢と希望を持たせる国家戦略を描き、実行する見識と心意気がありました。