トップページへ仙台藩最後のお姫さまみちのくの文学風土
みちのくの和歌、遥かなりみちのくの指導者、凛たり武将歌人、伊達政宗
 
虹色光輪の詩人
2002年5月25日


  大空は梅の匂いに霞みつつ曇りも果てぬ春の世の月

 春爛漫の季節を迎えました。佐藤敬子さん、この度詩集「紅色光輪」ご出版おめでとうございます。心からお喜び申し上げます。慌ただしい日常の喧噪の中で、ともすれば見失いがちな大変大切なことを想起させてくれるような、美しく新鮮な衝撃を受けております。
 「感応同交」という言葉があります。人が山に対したとき山もまた人に対し、人が岩に語りかけたとき岩もまた人に語りかけるという事でしょうか。敬子さんはいつもそんな気持ちで、ご自身に対し、また星に語りかけてこられたのだなという思いを深くし、大変感銘いたしております。
 「春の夜の 人と生まれし 泪かな」
 人として生きて行くうえには美しいこと、悲しいこと、淋しいこと、楽しいこと、辛いこといろいろあろうと思いますが、それらのさまざまな思いを、濾過器を通して美しく清らかな澄み切った言葉に高められ、私たちに語りかけて余りある、珠玉の作品でもあります。
 先日、歌人の扇畑忠雄先生の米寿のお祝いにお招きをいただいたおり、先生から贈られた色紙に、次のような短歌が記されておりました。
 「老いてなお美しきものを我は見ん若かりし日に見えざりしもの」ご高齢の先生はいつも初々しい心で生きとし生けるものに接しているからこそ、心に残る数多くの短歌を今もお詠みになっておられるのだなという思いを深く致しました。
 敬子さんにおかれても、これからも瑞々しいほとばしるような心で、清く美しい詩を書き続けて行かれることを期待するとともに、更なる飛翔を祈念申し上げます。
 900年前の歌人源俊頼は、宮城のシンボルであります宮城の原の美しさを通してみちのくの奥ゆかしさを絶唱し、
 「さまざまに心ぞ富むる宮城野の 花のいろいろ虫の声々」という和歌を千載和歌集に残しております。何と美しく何と心豊かになる和歌でしょうか。
 敬子さん、そしてお集まりの皆様方の一日一日が、この和歌に謳われたように美しくも心豊かなものでありますこと祈念申し上げお祝いの言葉と致します。

              平成11年4月11日
                                              勝山館にて
      −佐藤敬子さん「虹色光輪」出版記念お祝いの言葉−